※資料抜粋:一般社団法人 日本電線工業会 発行「電線の知識」2018年3月13版
電線という言葉は、従来、電力や電気信号を伝える金属線の総称とされてきましたが、今では金属線のほかに、光ファイバのようにガラスを用いて光信号を送るものも含まれるようになりました。電線と並んでケーブルという言葉が使われていますが、電線とケーブルとの間には明確な区別はありません。一般には構造が複雑で太く、シース(外装)のあるものをケーブルと呼んでいます。
電線は、日常生活や産業・経済に欠くことのできない社会インフラを支える資材であり、社会生活の動力となる電気や、コミュニケーションに欠かせない情報を伝達する重要な役割を果たしています。人間の体にたとえると、社会にとっての血管や神経に相当し、社会生活の向上、産業の発展、文化の向上に大きく貞献しています。
電線と私たちの日常生活とのかかわりについて考えてみましょう。
電気が使用されているところには、必ず電線が使われています。家庭にある電気製品は、電源コードをコンセントに繋いで使います。コンセントには電線が繋がっており、電気が供給されています。また、普及しているスマートフォンや携帯端末などの無線を使った通信でも、その根幹は電線・ケーブルが支えています。
家庭内では、冷蔵庫、電子レンジ、洗濯機、掃除機、エアコン、テレビなど種々の電気製品が活用されていますが、これらの電気製品に電気を供給する電線が建屋内に配線されています。また、通常は目にすることはありませんが、それぞれの電気製品の中にも種々の電線が使用されています。最近、携帯電話、スマートフォンの普及で、どこでも、誰とでも容易に通話することができ、インターネットを活用することができるようになりました。これらの携帯端末は、無線で交信していますので、電線はほとんど意識されませんが、膨大な通信量を伝えるために無線基地局間又は無線基地局と交換機の間は、同軸ケーブルや光ファイバケーブルで情報が伝送されています。
超高層ビル、劇場、ホテル、高層マンションにも多くの電線が使用されていますが、これらの公共性の高い施設では、防災の観点から消防関係の設備に耐火・耐熱電線が使用されており、こうした施設で使用される電線には、延焼路にならないよう難燃であること、燃えてもハロゲン化水素ガスなどの有害ガスの発生が少ないこと、発煙量が少ないことなどの高い安全性が要求されています。
新幹線、自動車、航空機、船舶にも、それぞれの使用環境に則した高品質の電線が用いられています。このほか目に見えない、気の付かないところにも、多種多様の電線が用いられ、私たちの日常生活を支えています。私たちは意識することなく、電線を通じて供給される電気、情報を使い、豊かな生活を送っています。現代の生活基盤を電線が担っているといっても過言ではありません。
電線は、産業にとっても非常に大切な役割を果たしています。電九通信、電気機械をはじめとして、鉄鋼、自動車、建設、その他の産業にも多くの電線が必要とされています。
産業用として電線が多く消費されているのは、建設業向け、自動車会社向けが多く、これらの部門で約58%が消費されています。次いで、電装品メーカー向けとなっており、以下電力会社、発電機、モーターを主体とする重電機メーカー、通信機器、コンピュータなどの電子・通信機械メーカー、テレビ、掃除機、エアコンなどの家電メーカー、通信事業者となっています。このほかにも鉄道、鉄鋼、造船などの重要基幹産業でも多くの電線が消費されています。
近年では、私たちの生活、仕事の環境が大きく変わってきています。情報化社会に対応して、光ファイバケーブルなどの情報通信インフラが整備され、無線を使った情報端末で、いつでも、どこでも、誰とでも繋がることができるような社会になってきました。一方で地球環境に対する意識が高まり、低炭素化社会の実現、太陽光や風力などの再生可能エネルギーの活用、エネルギーの効率的な利用を目的としたスマートシティを目指す街づくりもはじまっています。また、エネルギーの使用効率を格段に高める高温超電導ケーブル・コイルは、未来社会を大きく変える可能性を秘めています。
電線業界では、このような社会の要請に対応してさまざまな用途に合わせた電線・ケーブルの開発を行い、今後も社会・産業界の発展を支えていきます。
電力用電線は、電気エネルギーを輸送することを役割としています。送電といって発電所で発電された電気を消費地の変電所に送る役目、配電といって変電所で所定の電圧に下げられた電気を工場、ビル、家庭などの電気引込口まで配る役目、さらに配線といって電灯や機械装置などのある場所まで電気を導く役目があります。
発電所から消費地までの電力輸送の役目を果たすものが送電線路です。
火力、原子力、水力などの発電所で起こされた電気は、鉄塔に張られている架空送電線又は地下に布設された地中送電線で超高圧変電所、1次変電所、2次変電所と順次電圧を下げて送られます。
3次変電所(配電変電所)で電圧を下げた電気を消費者の付近まで運ぶ役目をもつのが配電線です。
この配電線には、架空布設の場合と地中布設の場合があります。
一般家庭用としては、柱上変圧器で電圧を下げてから消費者の軒先まで引き込み、軒先から積算電力計を経て屋内に配線されます。また、多量の電気を消費するビルなどでは、地下ケーブルで供給されています。
配線は、最終使用箇所、すなわち工場・ビルなどにある機械設備や電気機器照明、一般家庭に電気を配る役目を担っています。
通信用電線には、電気信号を伝えるメタル通信ケーブルと光信号を送る光ファイバケーブルがあり、音声、画像、映像などの情報を伝送することを役割としています。
メタル通信ケーブルの代表的なものに電話用ケーブルと同軸ケーブルがあります。電話用ケーブルは、加入者の電話機から電話局の交換装置を経て相手の加入者の電話機まで音声を電気信号に変換して伝えます。また、
電話局相互の間は、光ファイバケーブルにより電気信号を光信号に変換して伝送しています。
電話用ケーブルとしては、主に市内ケーブルが加入者と市内電話局との伝送用に用いられています。長年、市内の電話局間には市内ケーブル、比較的近い都市間には市外ケーブル、中距離の都市間には搬送ケーブル、長距離の都市間には同軸ケーブルがそれぞれ用いられてきましたが、現在では、これらの電話用ケーブルは光ファイバケーブルに移行しています。また、国際電話や海外にインターネット接続するための海底通信ケーブルも海底光ファイバケーブルとなっています。
同軸ケーブルには、テレビ送信所のアンテナ給電用同軸ケーブル、テレビの映像を送るためのテレビカメラ用ケーブル、テレビのアンテナから受像機まで映像と音声信号を伝えるテレビ受信用同軸ケーブルがあります。
近年、衛星放送、都市型CATV、携帯電話などの普及に伴い種々の同軸ケーブルが使用されるようになっています。
光ファイバケーブルは、電気信号を光信号に変換して伝送するシステムに用いるケーブルです。
光ファイバの主なものは、石英系光ファイバです。細く、軽く、低損失で高速・大容量の情報伝達が可能なことから、高度情報化社会のインフラとして重要な役割を果たしています。
巻線は、電気機器の内部にコイル状に巻かれ、機械エネルギーを電気エネルギーに変えて発電に寄与するものと、他の電線によって送られてきた電気エネルギーを機械エネルギーに変えて動力を得るものとがあります。
たとえば発電機は外から力を加えて電気を発生させますが、モーターは外から電気を送って回すわけです。これらに使用される電線を巻線といいます。
さらに上述のほかに各種の電線が、電車、航空機、船舶、自動車、人工衛星、玩具など非常に広範囲に使用され大きな役目を果たしています。
電線には、下記の写真のようにいろいろな種類があります。
電線の種類は、次のような方法で分類することができます。
導体の材料 (銅、アルミ、ガラスファイバ)、導体の構成(単線、より線)、被覆の有無(裸線、被覆線、さらに被覆の材料別) 又は単心、多心による分け方、統計上の分類に基づく分け方、電線の使用目的による分け方などですが、ここでは、具体的な用途によって分類することにしました。
電線集合写真
火力発電所、原子力発電所、水力発電所などで発電された電力は、次のような経路を通って消費者のもとに送られます。
架空送電線は、海岸の火力発電所、原子力発電所、山あいの水力発電所などから都市や工業地帯などの電力需要地の近くの変電所まで、高い鉄塔に電線を架けわたして、電力を送る電線路です。
発電所の大容量化、電力需要の増大に伴い、送電線も超高圧、大容量のものになり、500kVの架空送電線がほとんどの電力会社で運用されており、さらに1,000kV設計の架空送電線路も布設されています。
架空送電線に使用される電線は、硬鋼より線、鋼JL、アルミより線系電線、銅合金より線、アルミ合金より線、光ファイバ架空地線など絶縁被覆をしない裸の電線です。
1)硬鋼より線
硬銅線をより合わせた電線で最も古くから使われている電線で、110kV以下などの比較的低い電圧の架空送電線用に使用されています。
2)鋼心アルミより線(ACSR)
中心に亜鉛めっき鋼線を送り出し、その外側に硬アルミ線をより合わせた電線です。ACSRとも呼びますが、これはAluminium Conductors Steel Reinbmedの頭文字、すなわち、“鋼で補強したアルミの電線” という意味で送電線に広く使われています。
銅に比べて導電率の劣るアルミを使う理由は、第一に銅の約3分の1の軽さであるためです。ただし、アルミには、強度的に弱いという欠点があり、これを鋼線で補強しています。アルミ線の導電率は、銅線の約60%しかないため、同じ電流を流すには、銅線の約1.6倍の断面積が必要です。しかし、それだけ太くなってもまだ軽く、しかも補強の鋼線による引張強さが大きいので、鉄塔間隔を銅線の場合よりも広くとることができます。
第二に、ACSRが高電圧送電線で使われるのはコロナ特性が良いためです。
これは高電圧になると、電線の表面から電気が空気中に逃げだそうとする性質があり、これをコロナ放電といって、高圧送電中の電力の損失と、ラジオ、テレビなど通信障害の原因となります。コロナ放電は、電線の外径が大きくなるはど出にくくなり、これらコロナ特性は良くなります。
もともと交流電流は、電線の表面近くを流れやすいので、電線が太くて表面積が大きいはど流れやすい理屈ですが、むやみに電線を太くすることは重量の関係から限度があります。ところがACSRは、前に述べたように同じ電流を送るには銅線よりも太いことが必要で、そのため表面積が大きくなることから電流が流れやすくなり、コロナ特性もよくなるという効果があるのです。
現在わが国で実際に運用されている超高圧送電線の電圧は275〜500kVですが、このように電圧が高くなると、コロナ特性から、ますます太い電線が必要となりますが、これも限度があるため、太い電線と同じ効果がある多導体方式(3相交流の各相に2〜8本の電線を使う方法)が使われます。この方式では、1本で無理をしなくてすみますので、送電容量も増加し、コロナ現象による損失も少なくなり、ラジオ、テレビなどへの通信障害なども除かれるわけです。
鋼心アルミより線(ACSR)
光ファイバ複合架空地線(OPGW)
架空送電線により超高圧変電所に送られてきた電力は、地中送電線(電力ケーブル)により1次・2次変電所又は3次変電所(配電変電所)へ送られます。
都市近郊に建設されている火力発電所からの送電は危険を避けるため、大部分は地中に布設された地中送電線により超高圧変電所へ送られます。
OFケーブル
高圧架橋ポリエチレン電力ケーブル(CV)
配電用の電線は、変電所(配電用)から消費者まで電気を送るために使用され、地中配電線(地中布設)及び架空配電線(架空布設)があります。
変電所において主に6600Vに電圧を変換し、柱上変圧器で100V又は200Vに電圧をさらに変換し、消費者まで電気を送ります。
変電所から柱上変圧器までは、地中布設又は架空布設にて電気が送られ、それらの配電線には、屋外用架橋ポリエチレン絶縁電線(OC)、架橋ポリエチレンケーブル(CV)などが使用されています。
柱上変圧器から消費者まで電気を送る架空配電線には、屋外用ビニル絶縁電線(OW)が使用され、電柱から消費者の軒先への引込線には、引込用ビニル絶縁電線(DV)などが使用されています。また、積算電力計の前後には、ビニル絶縁ケーブル(VV)、600V架橋ポリエチレンケーブル(CV)などが使用されて屋内配線に接続されています。
OW、DV架線状況
配線用の電線は、最終使用箇所の配線段階で使用する電線で、非常に多岐にわたる電線が使われています。
一般建築物、設備配線用の屋内配線には、600Vビニル絶縁電線(IV、HIV)、ビニル絶縁ケーブル(VV)及び高圧・低圧架橋ポリエチレンケーブル(CV)が使われています。
ビニル絶縁ビニルシースケーブル(VV)
架橋ポリエチレン絶縁ビニルシースケーブル(CV)
1) 鉄道配線用の電線
鉄道用の配線として電車への電力を供給するのに電車線(トロリ線)、き電線(フィーダ)、車両内部の配線には車両用電線、また、色灯式信号機には信号用ケーブルなどが用いられ、通信用の各種電線・ケーブルも多く使用されます。
トロリ線は、電車などに電力を供給する電線で、電車・電気機関車はパンタグラフをトロリ線に接触させ電力を取り入れます。一般の電気鉄道では、架線する際に引っ掛けてつり下げるために溝のついたみぞ付きトロリ線が使用されています。トロリ線の条件として導電率の良いことはもちろん、引張強さが大きく耐摩耗性に優れていることが要求され、特に電車が頻繁に通る区間ではそのことが重要です。耐摩耗性、大容量の電気鉄道用としてすず入りトロリ線が広く用いられています。
鉄道車両用電線・ケーブルは、新幹線をはじめ国内外の数多くの鉄道車両の運転室、床下配線、車体間配線などに用いられています。鉄道車両の安全や高速化又は難燃性や火災時の防災性能の要求などを満たすため、車両用電線の軽量化、難燃化、エコ化などの信頼性の向上が絶えず図られています。
2) 屋内配線用ユニットケーブル
マンションなどでは、配線用遮断器から各配線器具に至る分岐回路に使われるケーブル(VV、CV)を所定長さ・所定本数接続し、結線部をモールド加工したユニットケーブルが使用されています。
みぞ付トロリ線
屋内配線用ユニットケーブル
電気信号で情報伝達を行う電気通信のうち、電線を使用して通信を行うものを有線通信、電線のかわりに電磁波を用いて通信を行うものを無線通信といいます。有線通信は、古くから電話に、近年ではコンピュータネットワークに多く使用されています。
音声・画像・データの通信を行う情報としては、アナログ信号やデジタル信号があり、これらの信号をそのまま電流の変化になおして伝送するベースバンド伝送方式と、何回線分かをまとめて伝送する多重伝送方式とがあります。
一般的に後者の伝送には、非常に高い周波数帯まで必要とされるため、従来は搬送用ケーブル、同軸ケーブルが使用されていましたが、最近では、広帯域、低損失しかも無誘導という大きな特徴を有する光ファイバが広く使用されるようになりました。
電話用ケーブルは、市内線路用、市外線路用、構内配線用及び加入者配線用などがあります。一般に市内線路用には、市内ケーブルが用いられており、対形と星形があります。対形ケーブルは、導体をプラスチックで絶縁した線心2本を対より、集合してシースを施したケーブルです。星形ケーブルは、線心4本を星形(カッド)に配列してより合わせることで仕上外径を小さくしたものであり、CCPケーブルやPECケーブルなどがあります。
市外線路用には、比較的近い都市間では市外PEF-LAPなどが用いられ、長距離の都市間には主として光ファイバケーブルが用いられます。市外線路は市内よりも長距離になり、高周波帯まで使用されるので伝送特性が良くなければなりません。また、長距離にわたり多くの本数のケーブルをならべて布設するのは不経済であるため、少数のケーブルをできるだけ能率よく利用することが必要です。そのため、市外ケーブル、光ファイバケーブルなどにより、1回線で多数の通話を同時に送る方法がとられています。これを多重化といいます。
その他、ビルなどの構内配線用には、通信用構内ケーブルやFCPEV、加入者宅への引き込み用にはSDワイヤや通信用屋外線、加入者宅内には通信用屋内線などが用いられます。
PECケーブル
光ファイバケーブル
LAN(Local Area Network)、つまりオフィスや家庭内などのネットワーク環境の構築やインターネット接続をするために機器間(ルーター、サーバー、端末(PC)、プリンター)の配線に使われるケーブルです。
構造は、ツイストペアの4対を基本とし、シールドなしのUTP(Unshielded Twisted Pair)と4対一括シールド付きのF/UTP〔Foil(surrounding)Unscreened Twisted Pairs〕[ScTP(Screened Twisted Pair)ともいう]に大別されます。また、導体は、幹線系ケーブルに使用される単線タイプとパッチコードとして使用されるより線タイプのものがあります。
性能は、カテゴリで分類され、現在はギガビット伝送に対応したカテゴリ5e(CAT5E)とカテゴリ6(CAT6)、10ギガビット伝送に対応したカテゴリ6A(CAT6A)が主に使用されています。
光ファイバは細くて軽く、低損失で高速・大容量の情報伝達を可能とし、電磁誘導や雷害を受けず漏話が無いことから理想的な通信ケーブルと言えます。
光ファイバケーブルの応用分野は、公衆通信、電力系統の監視・制御、鉄道や道路交通の管理・制御、企業内のデータ伝送路、都市型CATV、架空地線を始め各種ケーブルとの複合化等あらゆる方面で利用され、情報伝送以外での応用等ますます応用分野が拡大されています。
光ファイバケーブルは、細く、軽く、低損失、広帯域で情報伝達量が多く、電磁誘導や、雷害を受けず、漏話や放電がなく、理想的な通信ケーブルといえます。
光ファイバケーブルの応用分野は、公衆通信、都市型CATV、電力系統の監視・制御、鉄道や道路交通の管理・制御、架空地縁をはじめ各種ケーブルとの複合化など、幅広い分野で利用されています。FTTH(Fiber To The Home)の普及に伴いビル内や家庭内へも光LANとして利用されています。
CATV用同軸ケーブル
(上)浅海用海底光ファイバケーブル(がい装付)
(下)深海用海底光ファイバケーブル(無がい装)
海底光ファイバケーブルの構造は、布設時及び引き揚げ時のケーブル張力や水圧に耐え、高水圧下でも浸水を防止するという特徴があります。また、布設距離が長距離(中継器間隔75~100km)であり、ケーブル補修並びに張替えが非常に困難なため、高い信頼性が要求されます。
基本的な構造の一例として、光ファイバ心線を直接、耐圧層としての3分割鉄個片内にジェリーとともに挿入、保護し、外周に鋼線、銅パイプ、シースを施す構造になっています。なお、ケーブル内部には浸水防止のためコンパウンドを充填します。
さらに浅海域では、潮流による摩耗や船舶からの錨の投下、漁船の底引き網などの外力によりケーブルが損傷する恐れがあり、機械強度を高めるためにケーブルシース上に一重又は二重がい装を施します。
海底用光ファイバケーブルに使用する光ファイバは、長期信頼性を有する必要があるため、陸上用ファイバ
よりプルーフレベルの高いものを使用します。
これまで説明してきた電線は、主に電気エネルギーを目的の場所まで送り届ける役目のものでした。ところが中には電気機器内のコイルとして使用され直接電気の伝達に関係のない電線があります。これらには、機械エネルギーを電気エネルギーに変換して発電に寄与するものと、他の電線によって送られてきた電気エネルギーを機械エネルギーに変換して動力を得るものとがありますが、そのいずれも磁気エネルギーを媒体として電気エネルギーと機械エネルギーの相互変換を目的とする電線で、わが国ではこれを巻線と総称し、欧米では・rindingWire又はMagnetWireと呼ばれています。
巻線は、大は発電所から小は腕時計まで、あらゆる電気機械、通信機器及び電子応用機器の主要な材料として極めて広い範囲にわたって使用されています。
導体に絶縁材料として、綿、絹、ガラス繊維や紙、フイルムを巻き付けた横巻線と、各種エナメルワニスを焼き付けたエナメル線に大別されますが、従来から使用されてきた綿巻線、絹巻線、油性エナメル線ははとんど国内では生産されなくなり、今日では、各種の新しい絶縁材料を使用した優れた巻線がつくられ、また、新しい用途に対する特殊な巻線も非常に多くなっています。
巻線の導体材料は、銅が主ですが、アルミも使用されています。
巻線を使用した製品
浅超極細エナメル線(直径0.01~0.03mm)を使用した時計
電気機器、電子・通信機器間の配線および機器内配線に用いられる電線です。
近年家庭用電化製品をはじめとし、各種電子機器用の電線への安全規格基準の強化、性能向上の要求等がますます強くなってきており、耐熱性・難燃性・電気特性の良い素材を用いた高品質・高信頼性の各種電線が開発され多く用いられるようになっています。
屋内の電気機器に使用される各種コードや、モータなどの電源の引込みに用いられる口出線・配電盤・制御盤・信号機器等の内部に配線される機器内配線用電線・通信機器相互を接続する機ひも等の種類があります。
ビニルキャブタイヤコード
機ひも電話機用ビニルひも 機ひもOA用モジュラーコード
コンピュータ、通信機器をはじめ、複写機、テレビ、オーディオなどの民生用電子機器の発展は、ますます拡大されています。これら電子機器に使用される電線・ケーブルも、用途に応じて多種多様のものがあります。要求特性に合わせ、適切な線材の選択が必要となります。
機器内部及びシステムを構成するため、機器間には相当量の電線が配線されており、その一本でも不具合が発生すると、機器全体又はシステム全体の機能が停止することも稀ではありません。電線の一本一本が重要な役割を果たしているといえます。
電子機器に使用される電線は、その構造から、絶縁電線、同軸コード、多心ケーブル及び多心ケーブルの一種である平形電線(フラットケーブル)の4つに大きく分類することができます。
フラットケーブル(テープ電線)
多心ケーブル
自動車、航空機、船舶などは、いずれも内部に発電機を備え、発電をしながら電気を使っています。これまで述べてきた用途では、一般に発電所で発電された電力を利用していますが、それと違って自身の内部に独立の電気系統をもっているわけです。また、これらは、いずれも激しく運動する精密な機械ですから故障を起こさないよう、その性能を最高度に発揮させる専用の特殊な電線が必要とされています。
自動車用電線は、自動車の走行に必要な機器、エンジンなどに電力、信号を送るために用いられ、たえず振動し、高温、寒冷、機械油、風雨にさらされるという悪条件下でも安定した性能が発揮できるようにつくられています。自動車用電線は、主に車内配線に用いられる低圧電線と、近年のハイブリッドや電気自動車のモーター駆動に用いられる高圧電線があります。
低圧電線は、軽量化を目的とし、信号回路は従来より細いサイズが用いられるようになっています。また、環境対応型の製品としてハロゲン化物を含まない絶縁体も製品化されています。ハイブリッドや電気自動車用高圧電線は、一般の低圧電線に比べ耐熱性、柔軟性に優れた絶縁材料で被覆されており、メンテナンス時などの感電に対する注意喚起のため、専用表示色であるオレンジ色に着色されています。
上記の各種自動車用電線を使用して、自動車に応じて配線に便利なように組み立てたものをワイヤハーネス(組み電線)といいます。このワイヤハーネスにより自動車の各部へ電気信号や電力が効率的に伝えられ、自動車の「神経・血管」としての役割を果たします。
船用電線
自動車用ワイヤハーネス
地球環境保全の観点から1998年3月、国土交通省(旧建設省)官庁営繕部よりグリーン庁舎計画に基づき環境調和型電線・ケーブルの開発と規格作成の要請を受け、次表に示す電力用、制御用電線・ケーブルの規格を作成しました。これらの電線・ケーブルを「EM電線・ケーブル」と呼ぶことにしました。EMとはエコマテリアル(Eco material)及び耐燃性の意味です。この電線・ケーブルは、従来から使用されているビニルにかえて耐燃性ポリエチレンを使用しているため、