「ドクターカッパー」が告げる経済の体温低下
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銅は電線や建材、電子部品、自動車など、現代の産業基盤を支えるあらゆる分野で使われています。「景気敏感資産」と呼ばれ、建設や製造業が活発な時期には需要が高まり価格が上昇し、逆に経済の減速が見込まれる局面では、真っ先に売られる傾向があります。このように銅価格が景気を診断するように先行して動くことから「ドクターカッパー」という異名を持っています。
銅価格、わずか数日で急落
2025年4月銅価格が急落、この“ドクター”が警鐘を鳴らし始めました。特に注目されたのがロンドン金属取引所(LME)での銅3か月先物価格です。わずか数営業日の間に14%下落する局面があり、2020年3月のコロナショック以来の大幅な下げとなりました。
下落の背景には、アメリカの関税政策の影響があります。トランプ大統領が発表した相互関税により、世界的な貿易摩擦への懸念が再燃しています。報復関税の応酬により、世界景気の減速が意識され、リスク回避の動きが加速した結果、幅広い資源の中でも特に需要感度の高い銅が売り込まれる格好となりました。
銅価格は2025年3月に一時1万ドルを超える高値を付けていましたが、今般関税砲の激震により世界経済の減速リスクが顕在化すると投機マネーの巻き戻しが一気に進行、積み上がっていた買いポジションの解消が売り圧力を強め、価格の下落に拍車をかけました。
今後の展望:反転か、さらなる調整か?
市場では、一部の投資家から「短期的には売られすぎている」との見方があり、今後反発の局面が訪れる可能性も指摘されています。一方で専門家の間では、今後の景気指標によっては、再び価格が9,000ドルを下回る水準で推移する可能性もあるとの見方が出ています。
「ドクターカッパー」の診断結果は、決して楽観できるものではなさそうです。