NY銅相場急落
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2025年7月30日、トランプ大統領は銅の輸入規制を発動しました。
8月1日から銅の半製品に50%の追加関税をかける一方、精錬銅への関税は少なくとも2027年まで対象外としました。市場は「精錬銅にも高関税がかかる」と読み、先回りして輸入を進めていたため、この「除外」が伝わった途端、ニューヨーク市場(COMEX)の銅先物は約20%も急落しました。
大統領布告では、銅の半製品および銅を大量に含む派生製品に一律50%の関税を課すものとされています。
これは銅が米国の国家安全保障と経済安全保障の基盤となる製造業にとって不可欠であると米国国務長官が結論付けたためです。
一方で精錬銅、鉱石、スクラップは当面の対象外とされています。2027年から段階的に15~30%の関税をかける可能性が示唆されています。
布告公表前、業界筋は「精錬銅も含めた」全面関税を織り込んでいました。
それを受け商社やファンドは、関税発効前に米国へ精錬銅を大量搬入し、価格差で利ざやを狙おうとしていたようです。
結果7月下旬にはCOMEX価格がロンドン金属取引所(LME)を大きく上回っていました。
ところが発表当日になって、「精錬銅は対象外」であることが判明したため、在庫は一転して“だぶつき”となってしまい、COMEX銅先物は20%前後下落し、高騰していた利ざやもほぼ消滅してしまいました。
一方でLME銅相場には大きな下落は見られず、日本国内銅建値でも8月1日現在改定は行われませんでした。
今回の価格急落は、市場の思惑(精錬銅にも関税)と政策の実際(半製品のみ)が食い違った結果によるといえます。
一方で精錬銅の課税は将来再検討される余地が残っています。政策リスクは完全に払拭されていません。
今後の展開として、
・COMEX倉庫に滞留する余剰在庫の行き先
・2027年以降に精錬銅関税が本当に導入されるか
という点が注目されるのではないか、と考えられます。